Ph.D.
{{出典の明記|date=2010年4月}}
Ph.D.(ピー・エイチ・ディー)とは、おもに英語圏で授与されている博士 (:en:doctorate) 水準の学位 (:en:degree) のことである。
概要
Ph.D.(英国式ではピリオドを打たずPhDとも表記)は、ラテン語の「Philosophiae Doctor」(英語では「Doctor of Philosophy」)の略語である。ドイツでは、Ph.D.ではなく、D.Phil.と言う(いずれの場合も、「.」はピリオドではなく略号なので、スペースを空けない。)。また、英国のいくつかの大学(オックスフォード大学、サセックス大学、ヨーク大学)でもD.Phil.という。直訳では「哲学博士」となる事から分かるように、基本的には、飽くまで神法医哲の伝統四学部のうち、職業系である神学部、法学部、医学部を除いた「哲学部(ないし文芸学部)」のリベラルアーツ系の学位であるが、近代になって自然科学の発展に伴い社会科学、人文学の学術系(Academic)の学問が発展するにつれて、文芸諸般を統べるものとして哲学部が神法医の3学部と比肩されるに至って近代西欧語でいうところの大学(universitas)は、真理発見の場とされるようになったのである[館昭・上掲書15頁]。以上のような歴史的な経緯を経て初めて哲学部はPh.D.の学位授与の認定権を獲得したのであり、Ph.D.は、現在では、科学部(Faculty arts and sciences)、物理学、天文学などを含む自然科学(natural science)のみならず、社会科学(social science)や人文学(Humaniteis)をも含む広範な学位となっている[館昭・上掲書62頁]。
同様の経緯から、ヨーロッパでは、農学部、工学部等新しい職業分野では長らく学位授与が認められず、日本と違い職業系ではM.eng(Master of Engineering、工学修士)のみの場合も多い[齋藤安俊『“Master of Engineering”と呼ばれる学士レベルの学位』(学位研究16・3)]
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これに対し、アメリカでは、そのような歴史的な区別はなされず、19世紀になってから、ドイツのフンボルト大学を手本に、真理発見に資する学術系の学問であれば広くPh.D.の学位を認めるようになった[館昭・上掲書15頁]。現在では、Ph.D.は、学術の研究を行う者に与えられており、BA(Bachelor of Arts、教養学士・文学士(外語と哲学を含む))、BS(Bachelor of Science、理学士)、MA(Master of Arts、文学修士)、M.Sc.(Master of Science、理学修士)、M.Phil.(Master of Philosophy、哲学修士)の上位の学位である。
アメリカのニュースクール大学では、2つ目の博士号にたいしてD.S.Sc. (Doctor of Social Science)を授与してきたが、この制度は廃止された。
ドクターとマスターの問題は、中世の大学の歴史に由来する。もともと大学はギルドの意味で、徒弟制度の下で親方に個人的に認定される免状をとった者をマスターと呼んでいた[H20.12.16『第4期教育中央審議会大学分科会委員懇談会議事要旨』3頁]。もともとマスター(主にパリ大学での呼び方)とドクター(主にボローニャ大学での呼び方)は同じ意味であったのだが[ハスキンズ・上掲書30頁]、やがてマスターはドクター以下のものとなっていき、近代に繋がる、バチュラー、マスター、ドクターの三位階制に発展したのである[ハスキンズ・上掲書52頁]。
しかし、今日なお、法務博士(J.D.)などの職業系の者が「ドクター」のタイトルを用いることに対する違和感は強く、理論研究者を中心に、社会的に、法務博士、臨床医などの職業系ドクターを、学問的には僭称と見なす傾向がある{{要出典}}。たとえば、イギリスでは、外科医(産科、泌尿器科等を含む)は、あくまでミスター(マスターではない)であり、社会的にドクターの敬称で呼ぶことはない。そもそもアメリカのドクター オブ メディスン(M.D.。日本語で医師)や法務博士等の専門職博士はPh.D.とは別の課程であり、学術的には修士相当、あるいは学士相当と見なされている。アメリカの多くの医科大学ではM.D.課程に在籍中に、Ph.D.取得する課程に在籍して博士号(Ph.D.)を取得してからM.D.の学位を授与する。よく、M.D.取得後にPh.D.課程に続けて在籍する等との記述が散見されるが、間違いである。
イギリスでは、Ph.D. よりもさらに上位の博士(D.sc/Sc.D。Doctor of Science)があり、主に名誉博士号に対する用語として用いられている(日本でも、かつて大博士があった。)
各国におけるPh.D.
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国においては、かつての日本における「博士 (理学)」(現在では「博士(理学)」)や「博士 (工学)」(現在では「博士(工学)」)と同じく、専攻分野ごとに異なっているが(たとえば教育学分野における博士は、一般的に :en:Ed.D.(博士 (教育学))と呼ばれる)、アメリカ合衆国教育省および全米科学財団 (:en:National Science Foundation) は、これらの学位を特別に区別せず Ph.D. と等価のものとみなしている。アメリカ合衆国におけるPh.D.の授与を受けるための大学院の課程は、日本の大学院の前期2年・後期3年の区分を設けない博士課程(一貫制博士課程)に似ており、大学(の学部)を卒業した者であれば入学できる。
一般的に、Ph.D.の授与を受けるには、所定の在学期間(minimum residence)の後,所定科目の筆記試験および口頭試験に合格した者(Ph.D. candidate)のみが3年~5年以内に博士学位請求論文 (:en:dissertation) を提出し、数人の研究者で構成される審査委員会の口頭試問(:en:defence)に合格する必要がある。
アメリカ合衆国では、Ph.D.の授与を受けるためには、最低でも3年の在学期間が必要とされているが、理科系の場合、Ph.D.の取得には平均して7.5年かかるといわれる。なお、日本とは異なり、アメリカ合衆国では、心理学、文学、教育学などの文科系のPh.D.の方が、理科系のPh.D.よりも多い。
日本
Ph.D.が「Doctor of Philosophy」の略語であることから、「博士(哲学)」もしくは「哲学博士」と翻訳されることがあるが、専攻分野にかかわらずこの呼称を用いるという意味では、現在の哲学が人文科学の一分野として体系に組み込まれているということを考慮するとミスリードな表現とはいえる。新制大学において博士課程が設置された1980年前後において、旧帝大とは異なる博士課程の意義として、課程博士としての博士の学位の授与が目標とされたが、その際設置された大学院の博士課程を修了した者に対して「博士 (学術)」(現在の「博士(学術)」)の学位の授与も行われるようになった。「博士(学術)」や「学術博士」は、アメリカ合衆国での専攻分野が特記されていない「Ph.D.」に相当するものと考えられる。現在も、英語での「博士(学術)」の学位の表記は「Doctor of Philosophy」とされている。また文部科学省の見解として、日本の大学で取得した博士の学位の英名として、いずれの専攻分野であっても、また論文博士・課程博士のいずれであっても、Ph.D.(Doctor of Philosophy)を使用しても差し支えないとしている{{要出典}}。日本では、課程博士(大学院博士課程(標準で3年以上)で必要単位を取得後博士論文審査に合格したものに授与される)と、論文博士(博士論文審査のみ合格したものに授与される)がある。3年以上博士課程に在学し必要単位は取得しているものの博士論文審査に合格できず退学する者(単位取得後退学者)の割合は卒業者全体の30-40%程度である。文系学位の取得は極めて困難であり、例えば博士(文学)については全卒業者の70-80%程度が単位取得後退学者となる。
参考文献
- C.H.ハスキンズ『大学の起源』(八坂書房)
- 館昭『原点に立ち返っての大学改革』(東信堂)
脚注
関連項目
- 学位
- 博士/修士/学士/短期大学士/準学士/専門士
- 大学院
- Ed.D.
- Piled Higher and Deeper (Ph.D.に関するウェブコミック)
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